ベトナム移住 (進出) はアリ?ナシ?海外移住の魅力とデメリット

ベトナム移住 (進出) はアリ?ナシ?海外移住の魅力とデメリット

一昔前は発展途上国というイメージが強かった東南アジアも現在では目覚ましい発展を遂げています。それでもまだ日本に比べれば物価は安く、物理的な距離も近いため多くの日本人が滞在しています。

東南アジア主要国の在留邦人数

※2022年10月時(外務省)

タイ78,431 人
シンガポール32,743 人
マレーシア24,545 人
ベトナム21,819 人
インドネシア15,972 人
フィリピン14,522 人
カンボジア3,363 人
ミャンマー2,388 人

基本的に6時間前後で日本との往来が可能で、LCC(格安航空会社)を利用すれば航空券も安く購入できます。
多くの国は経済成長真っ只中のため日本とは違うダイナミックな成長を肌で感じることができるのは、人生経験としても大変有意義だと思います。

海外移住のきっかけ

筆者は1978年生まれで福岡県出身、18歳で進学で上京してから東京で18年暮らした後、36歳の時にベトナムへ移住しました。
きっかけは当時周りの自営業者たちの間で海外進出・東南アジア進出がトレンドになっており、自分自身もいつか海外で挑戦してみたいという夢があったこと、年齢的にもこれが最後のチャンスだろうとの思いから海外進出を具体的に考えるようになりました。

誰か知り合いがいたわけでも、何かコネがあったわけでもなく、まさに身一つで新興国ベトナムに飛び出していきました。

ベトナムを選んだ理由

当初はASEAN10カ国から、経済成長、人口、市場の将来性、進出の参入障壁、カントリーリスク(経済、政治、社会的なリスク)、親日度合いなどの観点から色々と調べました。最終的にはベトナムかフィリピンの2カ国を候補として挙げていました。
この2つのうち治安や日本人の数からベトナムが有力だったため最初にベトナム・ホーチミンに視察に来たのですが、ホーチミンの国際空港から外に出て初めて街の空気を吸った瞬間に「あ、ここかもしれない」と直感で決めました。笑

ベトナム移住 (進出) はアリかナシか

海外”暮らし”を満喫したいという動機であればベトナムは不向きです。一番の理由は長期の滞在ビザ(仕事や留学以外)が取りづらいからです。でももし海外”事業”や”仕事”に挑戦したいという動機なのであればベトナムは面白いと思います。
(本稿もそうした観点で書いています)

現地の人たちの所得は年々増え消費市場は拡大を続けていますし、人口ボーナス期が今後20年続きますので安定的に経済成長していく見込みです。親日な上に若くて元気な人材が豊富で、日本語話者も多くいます。

移住してから色んな国へ行きましたが、ベトナムは東南アジア諸国の中でも生活しやすい国です。長期滞在ビザの取得難易度が高いことと、周辺諸国に比べて賃料が若干割高なことが欠点ですが規制は徐々に緩和の方向へ向かっていますし、食事・物価・治安・天候・現地の方との交流など総合的に満足度の高い国だと思います。

将来性や可能性が大いにあり、海外ビジネスの経験も積めて、生活しやすく、日本との往来もしやすい。海外チャレンジには最適な国ではないでしょうか。

魅力とメリット

①新興国でマーケットと一緒に成長しながら豊かな経験を積める

何といっても東南アジアが面白い理由はこれです。発展途上で未完成なことが面白い。生活インフラが整っていることや利便性を求めるのであれば、アメリカやヨーロッパの方がいいかもしれません。小売業や卸売業もモノによってはアジアよりも欧米でしょう。でも発展途上だからこそファーストペンギンになれる可能性があり、タイムマシンビジネスも通用します。人材が多く人件費も安いため労働集約型ビジネスにもメリットが大きいでしょう。
30代40代の日本人はこれからはグローバルな感覚を養い、海外でも稼げる手段を持つことが重要ではないでしょうか。

ベトナムはよく30,40年前の日本と形容されます。1980,90年代の最も日本が輝いていた時代です。恐らくこの記事を読んでいる私と同世代の方々にとっては親世代の話でどこか他人事です。でもベトナムであればそれを現代で体感できるわけです。ベトナムには団塊世代の60代70代の方々も多く住んでいますが、彼らは若い頃の自分の環境を思い出すようで楽しいとよく話をしています。

②親日国

ドラえもん、名探偵コナン、TOYOYA、HONDA、エースコックのカップ麺。これらのおかげで「日本」はベトナム人にとって非常に身近な存在です。日本に住んでいるベトナム人は52万人(2023年6月時)、ベトナムに住んでいる日本人は2万人弱いるため、交流も多く精神的な距離も近くなっています。外務省調査でもベトナム人の94%は日本と友好的な関係であると認識しています。実際に住んでいると日本人というだけでフレンドリーに接してくれる人が多いです。

親日であるということは日本人、日本の商品・サービス、文化、価値観を受け入れてくれ易いということです。日本語を話す方も非常に多いです。
同じアジアでも中国、韓国、インド、イスラム圏であるマレーシア、インドネシアではまったく異なります。

実体験のエピソードですが、ベトナムに来た頃時計が壊れたので町にある時計屋に修理に行ったことがあります。その際ベトナム人のおじいちゃん店主が分かりやすい塩対応で「なんだこいつ感じ悪いな。。」と思っていたところ、どうやら私のことを中国人と間違えていたようで一緒にいたベトナム人の友人が「この人は日本人ですよ。」と説明したところいきなり神対応に変わりました。「いやぁ勘違いして悪い、中国人かと思って。」と言われてなるほどなと色々と学びました。

③治安が良い

ベトナムでは夜に女性がひとりで歩いていても安全です。日本にいると感覚がわかりませんが治安がいいというのは大きなメリットです。歩いて行動ができる、ひとりでも歩ける、夜でも歩ける、女性や子どもだけでも行動できる、というのは当たり前のようで当たり前ではありません。商売の仕方に大きな影響を与えます。

例えばフィリピン・マニラは特に治安が悪いことで有名ですが、マニラには一部の地域を除いてほとんど路面店がありません。あっても店の前は鉄格子で囲われていて物々しい雰囲気です。移動はドア・トゥ・ドアのタクシー移動が基本で、移動手段は流しのタクシーではなくGrabを利用します。特定の地域や商業施設内であれば普通に行動したり買い物ができますが、治安が悪いというのそれだけ行動制限があり商売にも制限があるということです。

ただ、ベトナムはいくら治安がいいとは言えやはり危ない場所や通りはありますし、バイクを利用したひったくりや酔っ払いを狙ったぼったくりなどの軽犯罪は多いため注意が必要です。

④カントリーリスクが低い

タイやミャンマーのように軍事政権で政治が不安定ではありませんし、インドネシアやフィリピンのように地場の財閥系企業が市場を牽引してるようなこともありません。カンボジアのように中国の投資に依存して市場のバランスが崩れるようなこともありません。社会主義国家として公安権力が強く賄賂などが横行してることは大きな欠点ですが、基本的に市場経済は自由で外資規制も徐々に撤廃されつつあり、バランスは取れている方だと思います。

人口の9割が無宗教または仏教徒で宗教間の対立はなく、人口の1割ほどが53の少数民族ですが民族紛争はほぼありません。

季節により台風や暴風雨に見舞われることはありますが、火山や地震はなく自然災害は少ないです。

⑤どこの国にもアクセスしやすい立地

ホーチミンの国際空港(タンソンニャット空港)からのフライト時間

行き先フライト時間
カンボジア – プノンペン1 時間
ベトナム – ダナン1.5 時間
タイ – バンコク1.5 時間
ベトナム – ハノイ2 時間
マレーシア – クアラルンプール2 時間
シンガポール2 時間
フィリピン – マニラ3 時間
インドネシア – ジャカルタ3 時間
日本 – 大阪5 時間
日本 – 東京成田5.5 時間

近隣諸国の首都やリゾート地にもアクセスがしやすく、日本とベトナムは直通便であれば5時間~6時間で移動できます。時差も2時間と少なく、いざとなればすぐに日本へ戻れる安心感があります。

⑥物価が安い、人件費が安い

ベトナムも経済発展に伴って、物価は上昇しています。特にホーチミンやハノイなど都市部では日本の地方都市よりも家賃が高いこともあります。賃料、人件費も上昇していますが、日本と違い売価も上げやすいのはメリットです。それでもまだまだ食費や通信費など生活に必要な物価は日本と比較しても安いです。

ホーチミンの最低賃金は現在501万ドン/月、日本円で約3万円ほどです。
一般的な給与水準は月700万ドン〜1500万ドン(41,500円〜89,000円)ほど。幹部クラス人材で月3000万ドン(178,000円)前後です。

⑦長期滞在に重要な食文化。ベトナム料理は美味しく、日本料理も豊富

ベトナム料理はお米文化で日本人の味覚に合っていて非常に食べやすく種類も豊富です。日本食も、他国から出張や観光で訪れた方がホーチミンの日本食は種類も豊富でしかもレベルが高いとよく口にしています。

私がベトナムに来た2015年頃に比べても日本食レストランは非常に増え、また現地の方々の所得が向上していることもあり日本食をよく食べるようになりました。近年人気がある料理は寿司、ラーメン、焼肉などですが、昨年から居酒屋ブームも始まり日系飲食店は賑わいを見せています。

長期滞在するにあたって現地の食事事情は大変重要です。現地の水や食べ物が口に合わないのは想像以上にストレスです。

デメリット

次にデメリットをご紹介します。

①長期滞在ビザの取得が比較的難しい

ベトナムはマレーシアやタイと違って「リタイアメントビザ」がなく、収入や資産があれば住める国ではありません。現在はビザ無しで45日間の滞在、e-ビザを取得すれば90日間の滞在が可能です。延長は対応しておらず、一度国外に退出して再入国する必要があります。

ベトナムで1年以上の長期滞在ビザを取得する場合は以下の5つのパターンしかありません。
・就労
・投資活動(事業活動)
・上記の方の配偶者や子ども
・ベトナム国籍の配偶者
・留学
そのため、例えばフリーランスの方がベトナムで長期滞在することは困難ですし、国内で所得を得るような活動を行なった場合は違法になります。
※ベトナムは外国人の個人事業主は認めていません。

7つの主なビザについて説明いたします。
① ノービザ
期間:45日間
日本のパスポートで有効期限が6ヶ月以上ある方に発行されます。事前申請は不要です。

② e-ビザ
期間:90日間
オンラインで事前申請を行い入国前に取得します。

③ 商用ビザ(DNビザ)
就労や企業訪問などビジネス目的でベトナムに渡航する際に取得するビザで最長3ヶ月です。
貴方を招聘する企業から招聘状と呼ばれる書類を準備してもらい、在日ベトナム大使館やベトナムの空港などの窓口でビザを取得します。一度のみ入国が認められるシングルタイプと、期間内に複数回の入国が認められるマルチタイプがあります。

④ 就労ビザ(LDビザ)
ベトナムで就労する方に発行されるビザで最長2年です。
商用ビザで入国した後に労働許可書を申請・取得し、次に一時滞在許可証を申請・取得します。更新時はベトナム国内に滞在したまま更新手続きが可能です。

⑤ 投資家ビザ(DTビザ)
ベトナムで投資を行う方へ発行されるビザです。投資額によって取得できるビザが変わります。
・DT1 ビザ 5 年間(出資金は 1000 億 VND 以上)
・DT2 ビザ 5 年間(出資金は 500 億 VND 以上~1000 億 VND 未満)
・DT3 ビザ 3 年間(出資金は 30 億 VND 以上~500 億 VND 未満)
・DT4 ビザ 1 年間(出資金は 30 億 VND 未満)
※30億VND=約1800万円

⑥ 家族帯同ビザ(TTビザ)
ビザ保有者の配偶者や18歳未満の子ども、またはベトナム人配偶者の方に発行されるビザで最長2年です。※外国人ビザ保有者の配偶者や子どもは保有者のビザ期限に準じます。

⑦ 留学ビザ(DHビザ)
18歳以上でベトナム国内の教育機関(大学など)に留学する方に発行されるビザで最長2年間です。一般的にはまず6か月が認められて期間終了後はベトナム国内で延長する場合が多いです。

②賄賂を求められる時がある

ベトナムは社会主義のため公安権力が強いです。そのため、法治国家ではなく人治国家と理解することが必要でカネとコネが重要になる場面がよくあります。
例えばレストランを開業する際には行政へ各種許認可申請(建築、食品衛生、消防、アルコール販売、広告など)を行わないといけませんが、時間の短縮、申請書類の省略、手順の省略などを理由に賄賂を要求されることがあります。明確に要求されるわけではなく、異常に時間がかかったり手間がかかったりそれとなくそういうことですよ、わかってるよね?という雰囲気です。
日本の常識では到底理解できないことですが、正規でやる場合は時間と書類準備などの作業に大きな労力を割かれます。

また交通においても違反した際はよく賄賂を求められるため、慣れている方は財布をふたつ準備していたりします。

③ベトナム語習得の難易度が高い

ベトナムの公用語はベトナム語になります。
ホーチミン、ハノイ、リゾート地などの観光エリアでは英語が通じますが、ローカルエリアではベトナム語しか通じません。
ベトナム語は6つの声調があり発音は非常に難しいです。
(例えば、日本語で雨と飴は読みは同じですが発音が違いますよね、これが6種あると考えてください。)
スタッフや取引先とは通訳を介した日本語か英語で直接やりとりすることが多いですが、簡単なベトナム語でも話せた方が親密度が確実に増します。ベトナム人もベトナム語を話す外国人は珍しいので喜んでくれます。個人的には特にスタッフの名前の発音は正確に覚えた方がいいと思っています。

筆者も1年間ほど毎週日曜日1〜2時間のベトナム語学習を行い、簡単な会話であれば話せますがビジネス上では到底通用しません。余談ですが現在ベトナムでは韓国人の存在感の方が大きいですが彼らの多くは流暢なベトナム語を話します。ベトナムに来る前に徹底的に勉強してくるそうですが、熱意と覚悟が違うことがビジネスシーンでも表れていると感じます。

④医療が脆弱

ベトナムは日本と比べて医療レベルが低く、ローカルの病院やクリニックはベトナム語のみの対応が多いです。都市部には日本人医師や外国人医師が在籍する外資系医療機関も増えてはいますが、受診料が高額なため保険加入は必須だと考えておいた方が良いかもしれません。
そのため、慢性疾患など持病をお持ちの場合はよく検討した方が良いでしょう。

また、衛生面においても特に食中毒、飲料水、大気汚染の3つは少し注意をした方が良いでしょう。特にハノイは大気汚染が深刻な問題になっています。

筆者は約10年ホーチミンに居住しており、ローカルレストラン、ストリートフードもよく利用する方ですが食中毒は一度もありません。ただ、生モノや魚介類、食器の衛生などは気にするようにしています。

さいごに

ベトナムに移住して何が良かったか?何が変わったか?と聞かれたら「QOL(人生の質)」が飛躍的に向上したことです。
東京にいた頃に比べるとストレスが格段に減りました。花粉も満員電車も煩わしい人間関係もありません。日本特有の同調圧力も閉塞感もありません。これから成長する新興国で海外経験を積めること、良いことも悪いことも日本では体験できないことが自分の糧になっていること、円安で日本の経済力が落ちているいま外貨を稼ぐ手段を構築できていること、これらは自分自身の強みであり可能性です。ワクワクしないわけがありません。

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